ごあいさつ
いま日本社会は、たくさんの問題を抱えながら進むべき方向を模索している時代です。私は、これまでの日本とこれからの日本では、価値観もしくみも変わらなければ前に進めないのではないかと考えています。
私の二男は、耳が聞こえません。当初、それは大変ショックなことでした。しかし、多くの“ろう者”と出会い、手話やろう者の生き方を知ることで、私自身の価値観は大きく変わりました。
日本は昭和8年から、全国の聾学校で手話を禁止しクチパクを基本にした教育を行っています。全国にある約100校の聾学校では、ろう者の言語である日本手話を学び、その手話で教育しているところは1校もありません。一方、諸外国では30年も前から、「手話を第一言語、書記言語(読み書き)を第二言語」とするバイリンガル教育(2言語教育)を行っています。もちろん、日本のろう者たちも手話での教育を強く望んできましたが、文部科学省は前例や研究結果がないことを理由に公教育へのバイリンガルろう教育は見送ってきたのです。
そこで2000年より青年ろう者たちが設立した手話で教育するフリースクールを支援し、2003年にNPO法人格を取得。2008年には構造改革特区を使い、日本ではじめて『ろう児が日本手話で学べる私立ろう学校』明晴学園(幼・小)を設立。2010年に中学部を新設し幼小中の一貫校を創りました。
この10年、様々な分野のたくさんの方たちと出会い、学び、支えられ、ここまでやって来ることができました。その過程で、日本が経済大国になるために何を置き去りにして来たのかにも気づきました。2006年には「ろう児だけでなく、すべての子どもたちが幸せになって欲しい」との願いから「こども環境学会」の理事として、2011年からはNPO法人ジャパン・ユニバーサルスポーツ・ネットワークの理事としても活動をしています。
そして、誰もが「違いを認め・互いを尊重できる社会」を創るにはどうしたらいいのか?と考える中で誕生したのが、「社会を変える履歴書プロジェクト」です。これまで出会った多くの方々の賛同を得て、また、プロジェクトの主旨に賛同して下さる新たな出会いとともに、一人ひとりが、心豊かに生きることができる社会づくりに貢献させて頂きたいと思っています。みなさま、どうぞよろしくお願い致します。